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「これはハッキリ写っていてわかりやすい。素敵な指輪だ。二人とも幸せそうでうらやましい。それにしても、お綺麗な婚約者さんですね」
店主は「そのまましばらく写真を表示させておいてください」と手のひらを見せ、背後の棚から大きな本を引っ張り出す。机に広げられたのは、大判の住宅地図帳だった。
「まずはご自宅から探してみましょうか。ええっと、栄町、栄町。ここですか」
記入用紙に書かれた住所を確認すると、地図帳をペラペラめくり、僕の住むマンションを見つけ出した。プライベートを覗かれているようで、少しだけ嫌な気分になる。
「そ、そうです。そこに住んでいます」
再び背後に体をひねり、今度は平たい小箱を机に置いてみせた。箱の外側はベロア生地に覆われていて、ジュエリーボックスのように見えた。蓋を開けると、思ったとおり、中には幾本ものネックレスが収納されていた。……いや、違う。これはネックレスじゃない。ペンダントトップがやけに大きな宝石で、チェーンは輪っかではなく一本の紐状だ。
店主の迷った指先が、緑色に輝く宝石を選ぶ。そしてチェーンの尻を指先でつまむと、緑色に輝くペンダントトップを、僕のマンションの真上へダラリと垂らした。
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