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2LDKの大雑把な枠に、ベッドやテレビの位置まで書き込まされた。
店主は僕の書いた間取りの上に、またもや宝石をぶら下げる。クルクルと大きな円が、玄関から廊下、廊下から浴室、トイレ、リビングへと向かって進む。寝室へ行く前に、キッチンに立ち寄った。すると、チェーンの回転が早まった。そして円がだんだんと小さくなっていく。
「ああ、キッチンにあるようですね。ここかな。この辺り。ここには何がありますか」
「そこはコンロのある場所です。下には収納棚がありますけど」
「じゃあ、その辺りを調べてみてください。きっと婚約指輪が見つかりますよ」
店主は大きくうなずくと、宝石を小箱に戻してしまった。これで失せ物探しは終了。自分の役目は終わったとばかりに、満足げな笑みを浮かべている。
「えっ、あ、あの……あっ、そう、そうですか……」
冗談じゃない。こんなオカルトまがいの手品とも言えない芸を見せられて、何が探し物のお手伝いなのか。怪しいにもほどがある。馬鹿ばかしい。こんなヤツに騙されて五千円も払ってしまった。こんなインチキを紹介した知人への信頼も揺らぐ。
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