第2話 シーサーって2つで1つなんだよ?

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「修学旅行生も来てるんだね」  そう言われて蒼維も見てみると、制服を着た生徒とネクタイを締めた先生と思われる2人が楽しそうにシーサーを作っているところだった。  他の生徒は見当たらない。奏は気に留めない様子で店内の様々な表情をしたカラフルなシーサーの売り場の方に歩いていったが、蒼維は不思議な組み合わせだなと思いながらその場に留まって2人の様子を眺めていた。 「大翔くん器用だね」  ひろと、と呼ばれた制服の男の子はうれしそうに先生と思われる男性の方を見る。その様子を見た瞬間、蒼維は視線にこもる熱に気付いてドキッとした。 「へへ、そうかな。ねえ先生、ちゃんとシーサーに見える?」 「うん、ちゃんとシーサーになってるよ」  大翔を見つめる先生を見て、蒼維はこの目を、この表情を知っていると思った。  ーーーうわぁ、これは…気付いちゃいけないことに気付いてしまったかも。お忍びってやつ?でもこんなにダダ漏れで大丈夫なのか。だってここ他の生徒も来るんじゃ…… 「完成したらこっちは先生が持ってて。こっちは俺が持っとくから」 「いいけど….大翔くん。シーサーって2つで1つなんだよ?離れ離れにしたらよくないんじゃない?」 「…だからだよ」  大翔は小さい声でシーサーを見つめながら言った。 「普段は離れ離れでも、これ持ってたらシーサーが引き合わせてくれる、みたいな?そしたらずっと一緒にいられるでしょ。俺と先生も。お守りみたいに持っててほしい」 「えっ……そんなことを、考えてくれてたの?そんなことを……」  言葉に詰まる先生をまだ幼さの残る笑顔で見つめる大翔。  ーーーちょ、ちょっと…すごいな、めちゃくちゃまっすぐだなこの子。堂々と隠そうともしないで……でもさ、ここお店だよ?どうすんの、色々バレたら……  蒼維は聞いているうちに恥ずかしくなってきて背を向けた。  そして2人の様子にハラハラしながら周囲を見回すと、向こうの通りからまさに大翔と同じ制服のグループがこちらに向かって歩いてくるのが見えたのだった。  ーーーほらやっぱり!こっち来てるから。ちょっと‼︎これ見られて大丈夫なの?気付け! 「ねー!シーサー作れるって書いてるよ。作りた〜い」 「えー、私買う方がいいな(笑)」  声が段々近くなる。 「へへ。先生泣きそ?」 「………だって大翔くんがそういうこと言うから!」  2人とも気付く様子がないまま、いよいよ生徒達がすぐ側まで迫っていた。  ーーー気〜付〜け〜〜!
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