第3話 ……バカなの!?

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第3話 ……バカなの!?

 カラフルな街並みを離れ30分ほど車を走らせると、2人はホテルのある恩納村に到着した。  リゾートホテルが立ち並ぶこの地域はプールや隣接するプライベートビーチがあるホテルが連なり、周囲の景観も良いので辺りを散策をする人も多い。 「早めにチェックインして散歩とか、本当によかったの?色々アクティビティとかもあったのに」と、奏はホテルのエントランスを出てうーんとひとつ伸びをすると、旅行の計画を立てる時と同じことをもう一度蒼維に言った。 「うん、いい」  蒼維ははっきりとした口調で言い切った後で、少し言い淀みながら続けた。 「カナは予定詰め込むよりのんびりする方が好きでしょ。それに……こういうの普段しないから……デート、ぽいだろ」  語尾はほぼ聴き取れないくらいの大きさになったが、奏の耳にはしっかりと届いていた。 「え、珍しくこと言うわぁアオくん。じゃあちなみにですけど、手は……つな……?」 『……が、ない』と2人でハモり、奏はわかってましたとばかりに「だよねぇ」と笑って呟いた。  ーーーこの期に及んで沖縄まで来たのに手も繋がないとか言ってる俺が、ほんとにアレを渡せるのか?  蒼維はアレを買った時の自分のテンションを呪っていた。  旅行の予約も無事済んですっかり舞い上がっていた蒼維は、そのまま夜中までネットで観光地や食べ物を検索していたのだが、そのうちテンションが上がってアロハシャツまで検索してしまった。深夜のハイテンションは恐ろしい。その時の頭の中はハイビスカスのお花畑だったのだと思う。気付けば色違いのアロハシャツの注文が完了していたのだった。なぜZOZO○OWNも気を利かせて購入を確定する前に「本当によろしいですか?」と2回くらい聞いてくれないのだろう。そうしてくれたら我に返ったかもしれないのに。  そのお揃いのシャツは言い出せずにバッグの奥にしまい込まれている。  ーーーでもな、さっきアイス屋さんでもオソロ男子いたじゃん?テーマパークとかで友達とやる奴もいるし、そういうことだよ。大丈夫。大丈夫……か?俺だぞ?オソロって。キャラじゃないにも程がない?さっきシーサー作ってた高校生なら躊躇なくやってんだろうな。勢いあるっていいよな……  外でイチャイチャしている恋人を見かけても「人目があるのによくやるよな」としか思わなかったはずなのに、蒼維にとっては今までにない感情だった。 「せっかくだし、散歩しながらこの辺回ってみよ」 「あ、うん」  歩きながら目の前に広がるリゾートホテルにいちいち声を上げてはしゃぐ奏を見ていたら蒼維もつられて笑っていた。 「ねえアオ、いつかさ、あの離れのすげえコテージに泊まってビーチサイドで酒飲もうな」 「あー、シャンパンとかね」 「花とかフルーツ乗ってるカクテルも」  未成年の俺たちの想像なんて、きっと大人が聞いたら笑うだろう。でもそれが奏と一緒に叶ったらどんなに楽しいだろうと思う。
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