第3話 ……バカなの!?

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 少し歩くとブーゲンビリアの咲く小道に出た。  この赤い鮮やかな花がブーゲンビリアというのだと、奏も蒼維もガイドブックで知った。 「わ、沖縄って感じだな」 「ね」  2人と同じように散策を楽しむ人々がまばらにいる。  その時、突風が吹いて2人の目の前に帽子が飛んできた。奏が咄嗟に手を出して掴むと、一人の男性が走り寄ってきた。後ろで束ねた金色の髪に、深い緑の瞳。どこの国の方だろう、と蒼維は思った。スカイブルーのアロハシャツが明るい髪色によく似合っている。 「Here you are.」  奏もそう思ったのだろう、そう言うと帽子を手渡した。 「あ、ありがとう…ございます」  相手が少し気まずそうにお礼を言う。  ーーーいや、めちゃくちゃ日本語じゃん。  蒼維は吹き出しそうなのを必死に堪えた。 「日本語で大丈夫でしたね……すいません」 「はは、こう見えて僕普通に日本人なんだ。なんかごめんねぇ(笑)ちなみにこれ、普通に染めてるの」  屈託なく話す年上らしいその人を見て、奏も「そうなんですか?うわ俺だっせえ!」と笑う。 「学生さん?」 「はい。お兄さんは社会人ですよね。金髪って、何されてるんですか?」 「あー、えっとね、比較的自由な会社なんだ。ていうか、僕ら髪型オソロだね」 「そうですよね、俺もちょっと思ってました」と互いに笑い合う様子を見ながら、内心蒼維は「カナってほんと秒で他人と仲良くなるよね…それになんかこの2人の空気似てんな」などと考えていた。 「ハル、若者にちょっかいかけなくていいから。困ってるだろ」  その時向こうからもう1人の男性が歩み寄ってきた。 「すみません」と蒼維に向かって謝ると、半ば強引にハルと呼ばれた男性の腕を掴んで連れて行こうとする。 「なんだよナリ〜、帽子のお礼言ってただけだよぉ。ねえ、何か俺ら雰囲気似てない?髪型とかさ。アロハシャツ着てたらますます似ると思うんだけど!」  ーーーアロハシャツ!  不意にそのワードが出て蒼維はドキッとした。いや実は旅行バッグの中にあるんですよ〜……なんて言えるか! 「もう、ハル初対面の方つかまえて何言ってんの。……あ、すみません、失礼します」  もう1人のナリと呼ばれた男性に電話が掛かってきたようで、会釈をするとその場を離れた。 「じゃあね!旅楽しんで!」  腕を掴まれたままのハルもそう言って手を振ると、奏と蒼維もつられて手を振った。 「なんか…面白い人だったね。俺もちょっとカナに似てると思っちゃった」 「金髪で自由な会社って気になるよね」 「確かに」  そう話していると、前方でなにやら仕事の電話をするナリの「はい、ですが社長は今休暇中ですので、私が代わりに…」という声が聞こえる。  ハルがその電話を奪い取るようにして変わると「変わりました、小田です。秘書の方ですか?CEOに変わってください……Hi,Mr.……」と、さっきとは別人のような話し方で話し始めた。 「………ね、カナ………」 「ははっ、あの人やっぱ英語喋れんじゃん!」  奏はすげえ、と笑うと蒼維の方に向き直って「…でも俺もあのくらいにはなってる予定だから楽しみにしてて」と微笑んだ。 「あのくらいって、英語のこと?」 「まあ、いろいろとね……あ、ねえアオ!あっちのホテルのプールやばくない⁉︎」 「えー、どこ…」  蒼維はホテルの豪華なプールに目を奪われる奏に返事をしながら、前を歩く2人が気になり目で追っていた。  声は聞こえないが、ハルがナリにスマホを返しながら耳元で何かを言っているようだ。先程まで終始クールな表情だったナリが柔らかく笑った。
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