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「アオ」
受付の人に案内されて入り口付近で待っていた蒼維に声をかけると、スマホに目を落としていた顔をパッと上げた。
毛先だけシルバーに染めた耳くらいの長さの柔らかそうな髪から、まつ毛の長いくっきりとした二重で切れ長の瞳がのぞく。左の目元の2つ並んだほくろは、出会った頃からある蒼維のチャームポイントだ。
蒼維は「見てこれ」と案内について行きながらスマホの画面を奏に向けた。
カラフルなアイスの画像と、その向こうの嬉しそうな顔。
「やっぱりさ、沖縄っぽいフレーバーは外せなくない?」
「紅芋的なやつな」
「そうそう…ねえ!ちんすこう味だって」
ーーー普段は口数が少ないのに、旅先でテンション上がっていつもよりよく喋るアオマジでかわいい。ねえ受付のお姉さん、信じられないかもしれないけどこの美少年俺の恋人なんですよ。聞きました?ちんすこうだって。なにこのエロかわいい響き。こんなの、何回でも聞きたくなりますよね。
「何味って?」と、自然なそぶりで聞き返す。
「ちんすこう」
「なになに、もっかい言って」
「ちんす………」蒼維は言いかけて黙り込んだ。
「ふっ………」
口元を押さえて震える奏の背中を、蒼維がグーで殴る。
それを見て受付のお姉さんがのんびりした口調で「仲いいですねぇ〜」と言って笑った。
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