第1話 だってナツ、ストロー噛むクセあるじゃん

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第1話 だってナツ、ストロー噛むクセあるじゃん

「あ、カナあれじゃない?アイス屋さん」と蒼維が海に面した白い壁の店を指差した。 「ロケーションやばいな、海外みたいじゃない?」  那覇空港から車で50分ほど走り、2人は北谷町の有名な観光地に来ていた。色とりどりの建物が取り巻くこの場所は、まるで外国に来たような印象だ。  混雑するお店の前で列に並びメニューを眺めていると、蒼維は近くの席に座っている客の目の前にある鮮やかなブルーのアイスがふと目に入る。 ーーーあの人達も男2人だ。結構いるのかな、男2人で旅って。しかもシャツ、オソロじゃない?てことは、俺達もそれほど不自然じゃないのか。  距離感が近いけれど、本人達はあくまでも自然な雰囲気で過ごしているように見える。いつもこんな風に過ごしているだろうと想像する。外ではわざとらしい程に距離を取ってしまう俺とは正反対だな、と思った。  まだ奏とこうしてデート同然のような旅をしていることに慣れない蒼維は、この2人が気になった。  聴くつもりはないのだが、自然と2人の会話が耳に入ってくる。 「あ、ケイキ。この曲、前行ったライブでやってたやつじゃね?」 「あー、だね。ラス前のやつ」 ケイキ、と呼ばれた男性は音楽に耳を傾けながらストローを咥えるもう一方の男性の様子をしばらく眺めてから再び口を開いた。 「…ちなみにナツ、それ僕のストローね」 「ん?」  ナツ、と呼ばれた男性はストローを咥えたままケイキの方を見る。 「何のために2本もらったの。まあどっちでもいいけど」 「そう?何でわかんの?ケイキのだって」  本当にわからない様子でいるナツに、ケイキは本気で言ってる?という表情を見せた。 「だってナツ、ストロー噛むクセあるじゃん」 「俺そんなクセ……あるわ。噛み跡ある」  片方のストローには、ナツの歯の跡がくっきりと残っていた。 「自分で知らなかったの?」 「知らんし。ふふ、把握されちゃってんなぁ」  呆れた顔のケイキを見てふわふわと笑うナツに、ケイキもつられて笑顔になった。 「しちゃってるねぇ……って、どっちも噛み跡!」  ナツがストローを口から離すと、どちらのストローにもお揃いの噛み跡が残っていた。 「あ、わり、つい」とナツがまた笑う。 「まあいいけど(笑)」  ケイキは噛み跡が付いて潰れたストローを丸く整えると、一口飲み「あ、おいしいなこれ」と呟いた。
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