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第2話 シーサーって2つで1つなんだよ?
「アオ〜こっちに目線くださーい!あっ、ねえって!」
蒼維は奏の構えたスマホから目線をぷいっと逸らすと、カラフルな建物が並ぶ通りを足早に歩いていく。
「こんなに映えるのにアオが全然写真撮らせてくんない…あっ、わかった!もしかして俺がちんすこうアイス半分以上食べたの気にしてる?」
「気にするか!それよりカナさ……」
くるっと踵を返すと蒼維は奏の方をじろりと睨みつけた。
「さっきから連写しすぎなんだよ!あの人すげえ撮るじゃん(笑)って通りすがりに笑われたの聞いてた?ほんっと恥ずかしいんだけど…わかってんの⁉︎」
ーーーアオこそわかってないよ。
連写した時に「撮りすぎ!」って笑う瞬間の堪らない表情をさ。
奏はそう思いながら「へ〜い気を付けま〜す」と唇を尖らせて気のない返事をした。
ピンク、黄色、オレンジと続く壁。時計塔、観覧車、ヤシの木の並ぶ通り。まるで違う世界に紛れ込んだようだ。
蒼維を撮るのを諦めて周りの景色にスマホを向け始めた奏の手元を、蒼維は後ろからぼんやりと見ていた。
ーーーさっきまた言い過ぎちゃった。ごめんカナ。せっかく楽しく過ごしにきたのにな。手……繋いでみる?別世界みたいなここでなら……いやいやいや、無理!考えただけで恥ずかしい!無理!
通りを歩いていると、1軒の店先にある「手作り体験」の看板が目についた。気になって2人で店先を覗き込む。
「これシーサーだよね?手作り体験なんてできるん……あっなんかすいません、奏さんを前に粘土細工の話なんて」
蒼維はわざとらしくそう言うと、ニヤニヤしながら奏の方を見た。
「うるせえよ(笑)いつの話してんだよ」と苦笑いする奏。
「小3の時、ドラゴン作ったのにみんなに『道端で干からびたミミズ』って言われた伝説の…っと、これ以上はかわいそすぎてボクの口からはちょっと」と蒼維は申し訳なさそうな表情を作って、白々しく口の前で指で×印を作る。
「ボクの口からは〜じゃねえわ。ほぼほぼ言ってるからなそれ!」
ーーーまるで昔の自分を人質に取られてる気分だ…
昔からお互いのことを知っていると、当然ながら過去のちょっとした黒歴史まで知られてしまっている。ちなみにその時に蒼維が作った作品はクラスだよりに載るくらい素晴らしかったのだが、悔しいので敢えてそのことには触れないことにした。幼馴染に対してカッコイイ自分でいるのって難しい。
奏はさっさと話を変えようと、再び店の中に目を向ける。
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