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しかし、そんな生活に転機が訪れたのは――今から二年前。俺が二十歳の時。……父が、事故で急逝したのだ。
一応王国には跡取りとして俺が届けられていたので、俺は不本意にも当主となった。あの時の継母とバージルの顔は、傑作だった。それほどまでに、彼らは俺が当主なのが気に入らなかったのだ。……その時点で、気が付くべきだった。
俺は当主の仕事に生きがいを覚えていた。重かった税を軽くし、領地のために尽くした。それは領民たちも評価してくれたらしく、ローエンシュタイン家を嫌っていた領民たちも俺には好意的だった。いつしか、彼らのために動きたい。ずっと、ずっとここに居たい、いや、いられる。そう、思っていた。
――あの日、バージルに陥れられるまでは。
「兄上のやっていることは人気取りです。裏では賭け事に精を出し、女性遊びも散々行っているんですよ!」
バージルは声高らかに捏造した証拠と共に俺のことを断罪した。その傍には――俺の婚約者であるエレンもいて。彼女は涙ながらに俺に虐げられていたと訴えた。……そんなこと、した覚えもないというのに。
初めの頃は領民たちは、俺の無実を信じてくれていた。が、バージルは金で領民の偉い奴らを買収し、多数決で俺から家督を奪い去った。……もちろん、エレンも。
正直なところ、エレンには嫌気がさしていたので、そこまで辛いとは思わなかった。……ただ、俺が今まで培ってきた信頼などは金であっさりと崩れ去るのだと知って、どうしようもなく虚しくなったが。
そのままバージルは俺のことをローエンシュタイン家から追い出し、刺客を送り付けてきた。
だからこそ、俺は命からがら逃げだし、あの『魔の森』に入った。……そして、そこで――フルールと、出逢った。
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