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「んんっ」
身じろぎして、瞼を開ける。そうすれば、タイミングばっちりとばかりに一人の幼女が私の元にかけてきた。
さらっとした黒色の長い髪と、ぱっちりとした大きな黒色の目。背丈は十歳前後の子供のものであり、彼女はくるりとその場で回ると「フルール、おはよう」と声をかけてくる。……ベリンダである。
「おやすみ……」
「こら、フルール。起きて!」
毛布をかぶってもう一度眠ろうとする私をたたき起こすように、ベリンダが毛布をはぎ取る。
だからこそ、私は渋々起き上がって大きく伸びをした。
「……ベリンダったら、うるさい」
わざとらしく耳をふさいでそう言うと、ベリンダは「フルールが朝起きないからだ!」とぷぅっと頬を膨らませて言う。……幼女の姿だと、そういう姿もとても似合っている。うらやましいほどに。
「それに、昨日拾った男のこともあるしさぁ……」
ベリンダは私の寝台に頬杖を突きながらそう言う。……昨日、拾った、男。……あっ!
「アデラール!」
そうだ。私は昨日、豪奢な身なりの男性を拾った。……すっかり、忘れていた。
「起きなくちゃ……!」
いつも朝食は私とベリンダの一人と一匹だけなので、適当な時間に摂る。けれど、アデラールがいる以上そうはいかないだろう。そう思い、私は慌てて櫛で髪の毛を整え、寝間着から普段着のワンピースに着替えた。
そのままキッチンの方に向かって、私は慌てて朝食の準備に移る。
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