さっきの雲は、今はもうこの空にはない

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「もう、しょうがないなぁ、アスカが二人のお嫁さんになってずっと一緒にいてあげるよ。約束してあげる」  幼稚園の園庭の隅にある大きな桜の木の下で、幼い私はそうはっきりと言っていた。  そう言えばそんなことあったな。今まですっかり忘れていた。  なんでこのタイミングでこんなことを思い出したんだろう。不思議……  ああ、でも眠い。どんどん落ちていく。意識が離れていく…… ◆◇◆◇ 「明日香(あすか)、頭痛くないか? 腕枕してやろうか?」  よく晴れた日。公園の芝生の上で私は、恋人の(あおい)と二人で寝転んでいる。 「大丈夫、痛くないよ。それより、あの雲変な形だね。何に見える?」  碧は、私が指差した雲を見ながら考え込んでいる。 「こういうのは考えちゃダメなんだよ。直感でいかないと」 「直感? 俺は明日香ほど感覚的じゃないからなぁ。俺には、溶けかけたソフトクリームにしか見えないよ」 「センスなさすぎ。どう見たって、雪だるまが花を摘んでいる姿じゃん」 「いや、この真夏に雪だるまは思いつかないし、ましてや花を摘んでいるなんて発想普通湧かないだろ」  碧と私は幼馴染だ。物心ついた時から、ずっと一緒にいる。
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