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シャーっと威嚇をしながらジャンプしてきたニヤタに、私は思わず広げていた手を戻し、ニヤタから離れるように体を捻った。そうしたことで、ニヤタは私と碧の間を飛び抜けた形になり、そのまま走り去っていった。
「だ、大丈夫か、明日香」
まだ放心状態の私に対して、先に我に返った碧が声をかけてきた。
「さっきのニヤタだよね」
「どうだろう、三毛猫だし、似てはいたと思うけれど」
「絶対、ニヤタだったと思う。でもなんで、あんなに威嚇してきたんだろう。最近見なかったことと関係あるのかな」
「もしかしたら、何かの病気かもしれないし、それこそ他人いや他猫の空似かもしれないし」
「なにそれ? つまんないんですけど」
「せっかく人が真面目に答えてやっていたのに」
碧のおバカ発言で、さっきまで抱えていたニヤタに関する違和感はいつの間にか薄れていったが、心の中に何か重いものを抱えたような感覚だ。そして、そのまま私たちはいつものように、雲を見上げて寝転がった。
◆◇◆◇
「小さい子どもが三人、手を繋いでいるように見えるな」
「うっそ。初めて私の感覚と一緒だよ。碧、成長したね〜」
「俺が成長したのか、明日香が俺に追いついたのかは分からないけれどな」
そう言いながらも、碧の表情は柔らかい。今日もいつもの公園で、芝生に寝転がって雲を見ている。
「ねえ、碧」
「どうした、明日香」
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