さっきの雲は、今はもうこの空にはない

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「うるせぇ、傍也(おかや)、てめぇは引っ込んでろ」  傍也(おかや)? 傍也(おかや)? 傍也(おかや)…… 「傍也(おかや)!」 「明日香、僕を思い出したんだね。早く、碧から離れろ。明日香、早く」  さっきまでは、ぼんやりとしか見えなかった顔がハッキリと見える。碧と同じくもう一人の幼馴染の傍也(おかや)。なんで今まで忘れていたのだろう。 「この前から、睨んでいたのはやはりお前だったのか」 「ああ。思っていただけじゃ気配しか伝わらなかったみたいだけれど、実行に移したらやっと二人に認知してもらえたよ。さっきはすり抜けたけれど、そろそろ物理的にも触れそうだ」 「傍也(おかや)、お前はもう関係ないんだよ。俺たちとは世界が違うんだから、邪魔すんじゃねぇよ」 「さっきまではな。明日香、思い出せ。何があったのか」  思い出す? 傍也(おかや)のこと以外にも忘れていることがあるの? 「いいかげん明日香を惑わすのはやめろ。明日香は俺が守るんだよ、これからもずっと」 「守るだと。笑わせるな、碧。自分が何をしたのか忘れたのか」  頭の中がグルグルする。気持ち悪い、怖い、切ない、暗い、寂しい、そんな感情が入り乱れる。 「明日香、傍也(こんなやつ)の言うことなんか放っておけ。俺と一緒に幸せになろう」 「お前が明日香を幸せにできるはずはないだろう。明日香、あの日、ここで、何があったか、思い出すんだ。辛いかもしれないけれど、今のままじゃダメだ」  あの日、ここで、何かあったの? 何があったの? 気持ち悪い。頭の中がグルグル回る。
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