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ついさっき来ばかりだが、夜の闇が更に深くなっているような気がした。
月の位置が少し変わり、やくそく地蔵を照らしている。
ええと、このへんだったけど……?
地面をキョロキョロとしながら探すが、見当たらない。
おかしいなぁ。まさか、誰かに拾われて……。
不安が強くなったその時、突然音楽が鳴った。
これは?!
七海のスマホの着信音だ。
え? どこ?
音がする方に視線を向けた。やくそく地蔵がいつもの顔でこちらを見ている。
あっ!
やくそく地蔵の足下に、まるでお供えでもするかのようにスマホが置かれていた。
どうしてこんな所に……?
不思議に思ったが、とりあえず電話に出なければ、とスマホを手にする。モニターを見ると、相手の名前もナンバーも表示されていない。
誰だろう?
なぜか、出ないという選択肢は思い浮かばなかった。受信をタップする。
「はい」
「七海……」
この声はっ!
「お父、さ、ん……?」
そう、父の声だった。
「七海、おめでとう。よく頑張ったな」
父と交わしたあの日の約束が蘇る……。
「おとう……さん……」七海は胸がいっぱいになった。涙が溢れてくる。「……ありがとう」
父と娘の久しぶりの会話。それを、やくそく地蔵はいつもの優しげな表情で見守っていた。
Fin
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