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「…ねえ、たっちゃん?聞いてる?」
「…ん。ああごめん。麻由香の太腿が気持ち良くて、ウトウトしてて聞いてなかった。
最近疲れてんのかな?」
「そうだよね。たっちゃん、疲れてるよね。
私、たっちゃんが疲れてる理由、よく分かってるよ。でも私ももう疲れちゃったな…」
そう言ったかと思うと、麻由香は急に無言になった。
麻由香の話は終わったらしいと、オレも再び目を瞑りウトウトし始めた。
麻由香は仕事だと思ってくれているようだけど、近ごろ複数のアパートを転々としているせいか、ほとんど寝ていないのだ。
そして麻由香の膝枕の上で本格的に寝落ちしそうになった瞬間。
オレの頬の上に、なにやら温かいものが落ちてきて、ポッと触れたのに気づいた。
ふと目を覚まして真由香を見上げると、麻由香が泣いていた。
「麻由香?どうしたの?」
「ごめん。私、我慢強くない子でごめんね。たっちゃん。私悪い子だ」
オレの問いかけに応えることなく、ひたすら泣き続ける彼女。
そして、少し落ち着いたと思った次の瞬間。
氷のような冷めた視線が、オレに突き刺さった。
そして一言。
「さよなら。たっちゃん」
振り上げた麻由香の右手に握られた銀色に光るモノがなんなのか。
オレに確認する時間は、もはや与えられてなかった。
終わり
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