とある夏の日の出逢い

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「え………」 「って、ごめん。初対面の男にこんなこと言われても嫌だよね。とりあえず俺の気が済まないから送る、行こう?」 「あ、はい……」  春臣さんが立ち上がったので私も立ち上がった。だけど頭の中では今言われたことがぐるぐる巡っていて。  かわいい、私が?  元カレにけなされた過去があるから、かわいいって言ってくれる人のことが信じられない。でも、面と向かって言ってくれてすごく嬉しくて。 「どうしたの、風夏ちゃん?」 「あっ、なんでもありません!えっと、私の家はこっち方面です。春臣さんはどっちですか?」 「俺のことは気にしなくていいよ、明日は2限からだし」 「そっか、大学って取る授業によって時間帯違いますもんね」  嬉しさを誤魔化すように元気に喋り出して、結局送ってもらうことにした。その後は歩きながらどこの大学に通ってるとか、普段はどんなバイトしてるとか、そんな話を聞いた。会ったばかりだけど、彼は話し上手で聞き上手で、他愛ない会話でもとても楽しかった。
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