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「どうしよう……」
時刻は午後9時。私はスマホを片手に部屋の中をウロウロしている。
だって秋華が勝手に送ったとはいえ、春臣さんと電話をする約束をしてしまったから。友達との電話は緊張しないのに、なんで男の人と電話するのってこんなドキドキするの?
「……うわ、手汗やばっ」
緊張のあまりスマホがじっとり濡れてしまった。
やだ恥ずかしい!急いでティッシュでふきふきしていたら通知音が鳴った。
──今からかけて大丈夫?──
春臣さんだ!私はアプリを開いて「大丈夫です」の文字とかわいいスタンプを送った。すぐ既読がついて通話の画面に切り替わる。
うぅ、緊張するなぁ。私は震える手で通話に応じた。
「こんばんは、春臣さん」
『こんばんは、ありがとう電話出てくれて。今大丈夫?』
「はい!」
30分前からウロウロしながら待ってました!とは言えず元気よく返事をした。
『あのさ、来週の土曜って空いてる?』
「空いてますよ!大丈夫です」
それにしても、会った時よりも少し低く聞こえる電話の声にドキッとする。
『じゃあその日にハンバーグ食べに行こう。お店予約しとくから』
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
『うん、よろしくね』
心臓がバクバクしてるからなんだか声が遠くから聞こえるみたい。すると『じゃあまた来週』と春臣さんの声が聞こえた。
あ、待って聞きたいことがあるのに!
「あの、春臣さん!」
『ん?』
「インスタフォローしても大丈夫ですか?」
『うん、俺も風夏ちゃん見つけたからフォローするね』
「ええっ、いつの間に?やめてください、私ご飯の写真しか投稿してないから恥ずかしいです!」
『風夏ちゃんが作ったアップルパイ美味しそうだった』
「あー!見ましたね!?」
『はは、見ちゃった』
見ちゃったと無邪気に笑う春臣さんを思い浮かべる。付き合い浅いから分かんないけど、こういう母性をくすぐるところ、年上にモテそう。
それから来週お願いしますと挨拶をして通話を終えた。だけどしばらくドキドキしていてその日は寝つきが悪かった。
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