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「……という訳ですみません。ハンバーグ作るの今度にして、週末は友達に勉強教えていただいてよろしいでしょうか」
その夜、バイト終わりの春臣くんに電話をかけた。でも、嫌だよね。いきなり知らない高校生に勉強教えろなんて。
立場が逆だったら私は嫌だ。
『深刻そうだから何かと思った、全然いいよ』
だけど、春臣くんは案外サクッとOKを出してくれた。え、いいの?負担にならない?
「ではお詫びと言ってはなんですが、クッキーくらいは焼きます」
『俺ね、チョコチップのクッキーが好きだよ』
「チョコチップですね、分かりました!
予定変更してすみません、埋め合わせは必ずするので」
『気にしなくていいよ、風夏ちゃんに会えるだけで楽しみ』
電話口から春臣くんの笑う声が聞こえてびっくりした。私に会えるだけで楽しみって、まるで春臣くんが私のこと好きみたいだ。
でもただの社交辞令かもしれない。春臣くんは人気者だから、もっとかわいい子と知り合う機会も多いだろうし。
よりによって私を選ぶわけないと思って、期待する自分の心を押し殺した。
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