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真継様が、ぎりっと唇を噛む。
炎華が腕を振るった。真継様の足元に、炎の塊が落ちる。
真継様が怯んだ隙に、炎華が私の体を抱え上げた。
「きゃっ」
「首につかまっておけ。飛ぶ」
言われた通り、炎華の首に両手を回すと、視界がぐにゃりと歪んだ。
様々な色が渦を巻いているように感じ、目眩がする。吐き気をもよおしかけた時、世界が元に戻った。見覚えのある座敷に、目を瞬かせる。
「何、今の……」
驚く私に、炎華は、
「瞬間移動した。屋敷に戻ってきたから、安心しろ」
と、答えた。
「それは鬼の力?」
「そうだな」
なるほど。だから、炎華は真継様の屋敷に現れたんだ。
そう問うと、炎華はばつが悪そうに頭をかいた。
「いや、実は、屋敷に入るのに手こずっていた。あの屋敷は、魔除けの呪が複雑に張り巡らされていたし、それを破るのに時間がかかった。早く助けに行ってやれずに、悪かった」
「そうだったの……。でも、どうして、私が屋敷にいることを知っていたの?」
「先に小花と咲を見つけたんだ。千代が来ていると聞いて、心臓が止まるかと思ったぞ」
「そうだ、小花と咲! 二人は無事なの?」
「無事だ。咲はすぐに母親のところへ連れて行った」
「良かった……」
私は心からほっとした。鵺も娘が戻ってきて、安心したことだろう。
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