カブトムシの箱

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*  四人が倒れている部屋に一人の男が入ってくる。倒れ伏した四人を見下すように見るその青年はテーブルの上に置いてあった白い封筒を拾い上げて自分のポケットに入れる。他の三人のポケットも同じように探ると同じ白い封筒が出てきた。 「明石さん。あなたはこの遺書をもらったのが自分だけだと思ってたみたいですけど。違うんですよ」  青年はひとり呟くように言う。 「姉は成人式の今日。四人全員に遺書を送ったんです。書いてあったことは本当ですよ。あなた達は姉を自分の好きなように理想を押し付けて見ていたようですが、姉は姉という人物であなた達はそれぞれその一面しか見ていなかったってことです。  別所さんが姉を襲ったのも事実ですし、女子グループに嫌がらせをされていたのも本当です。ただし、その嫌がらせを命じていたのは加藤さんですけどね。自分になびかない姉が腹立たしかったんでしょうね。父の会社の経営が傾いたのは土井さんが父親に頼んで会社に圧力をかけたからです。姉が働いていたホステスに土井さんは通っていたらしいですよ。言うことを聞かないと父の会社を倒産させるって脅していたようです。  もちろん、病院に通っていたのも本当です。姉は命に関わる思い病気にかかっていたんです。それの感染源はあなたですよ。明石さん。あなたは姉と付き合っておきながら複数の女性と性交渉していたでしょう? そこから感染したんです。  姉はたしかにすごい人でした。ただ、本当に人見る目だけはなかったみたいですね」  死んだ虫を見るような目で四人を見つめて青年は言う。 「ただ、姉がお人好しというのは本当ですよ。二年。あなた達が変わることを信じて時間をあげたんです。例えどんな理由があっても人を殺すなんて選択肢を取らない人間に変わっているようにと厚生する機会を上げたんです。  毒を渡して、復讐という人を殺す理由を遺書に書いて与えても、人を殺すなんてことはしてはいけないと気がついてほしかったんですよ。本当に人がいい。クズはどれだけ時間が立ってもクズだというのに」 「あなた達は姉の自殺の理由を知りたがっていましたよね」  青年は心底軽蔑するようにため息を吐いた。 「あなた達は知りたかったんじゃないですよ。自分が原因ではない自殺の理由があってほしかったんです。自分たちが姉に対する後ろめたさがあったから」  「あと、僕は見ていたんですよ。あの卒業式の日。人で混雑してるホームで姉は飛び込んだんじゃないんです」 「」  本当に救いようがないですね。そうつぶやいて青年は部屋を出ていった。
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