落留

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落留

中秋の名月か 今年は満月が重なるという特別な年だな 朝 そんなことを思いながら目が覚めた 起きたら 古い記憶 何故だか ありありと むくむく 昔 昔 もう 遠い昔 ときは昭和 チビだったわたし  三つ離れた弟も いた 月見団子 おばあちゃんの手作り あんこも作っていた 夜になると 月見団子をきれいに盛って お月さんの照らすあかりに 手を合わせる 静かな 時間 子供心にも 響いたひととき 月見団子は お供え すぐに 食べるものじゃないんだよ お供えの団子を盛るための台 大工だった おじいちゃんの手作り 懐かしいな でも なんで今頃 思い出すの? これって 記憶が落ちてきたって こと? おばあちゃん おじいちゃん 弟 今では みんな いない いなくなって ずいぶん経つけれど 記憶が落ちてきて  今に 留まった 記憶が落ちてきたら 甦るのだね 記憶が落ちてきて 亡き人が 甦る これって 手に触れること 存在の温かさ 感じることはできないけれど 記憶が 目の前に 存在を 連れてきてくれた 大事な 贈り物 懐かしの記憶 今に留めて そして 新たに  落ちて  また 留める     
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