Chapter 9 by Ran

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「蘭、今夜は帰るよ…朝まで一緒にいたい気持ちはあるけど…」 送ってくれた正太郎くんは私の部屋の玄関にも足を踏み入れず、珍しくポケットに手を入れて言う。 「すごく楽しく飲み食いして…いい気分なんだ」 「うん」 「正直…大好きな蘭と朝まで過ごしたい…でも、蘭との初めてが酒の勢いって思われるのは嫌」 「…ぅん…」 「僕は蘭を大切にしたいと思う…これからの僕の人生をかけて…ずっとずっと…」 正太郎くんは大志くんが‘色気増し’と言った表情を浮かべて私を見つめた。 「今夜一緒に過ごすことより、蘭と一生を共にすることを優先する…当たり前のことだけど。木曜日は…僕がここに泊まってもいい?」 「…ぁ…ぅん…狭い部屋ですけど…どぞ…」 どぞ…って…うろたえ過ぎじゃない?落ち着け、私。今は日曜日で木曜日まではまだまだよ。 だが…まだまだだと思っていた木曜日は、一度も夢を見ることなくすぐにやってくる。前日の水曜日の夜にはお父さんから電話があった。 ‘今日、正太郎が高坂の子になって。蘭と結婚を前提に付き合ってるって、わざわざうちまで来たよ。日曜日に付き合ってるとは聞いていたけど、また伝えに来てくれた。蘭も正太郎と同じ気持ちか?’ 「…ぅん…正太郎くんがいい…」 ‘そうか。それだけ聞きたかったんだ。また一緒に帰って来なさい’ 「はい、お父さん」 ここで‘うん’でなく‘はい’と言うのが正解だよね、真希パパ。
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