4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ホームルーム始めるぞー! では、進路希望の用紙を配るからな。第三希望まで書いて提出すること!」
担任の言葉に、教室がざわついた。高三の二学期が始まって一週間後。準備はしていた。進路希望候補の夏休みオープンキャンバスは全制覇して、希望順を決めてある。住んでいる所がまあまま都会でよかった。後は紙に書いて出すだけだ。
先生には渋られる進路先かもしれないが、親の説得は済んでいる。
説得? 諦められているだけかもしれないな。回ってきた用紙に書き込みながら思う。それでも、学費を出してくれるんだからありがたいけど。
「もう書いたのか? 阿武 姫乃」
担任が驚いた顔をしている。
「はい。これお願いします」
そういえば、この担任なんて名前だったっけ? 田部、甲部か? まあいい、この体育会系顔が担任だって認識はできてるから、問題はない。
「全部……服飾系の専門学校だな」
「ええ。親も了承済みです」
勉強は真面目にしてた。と言っても成績は中の中だけど。でも、文句を言われないぐらいには頑張っていた。担任は少しの間考えて。
「阿武、君ならそこそこの大学に」
「そこそこに行ったって意味ないですから。私、自分で服が作りたいので」
「もう決めてる?」
「はい」
私が即答すると、担任は一旦進路希望用紙に目を落とし。そして。
「推薦、いるか?」
意外と好意的な言葉が出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!