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最後に夏祭りに行ったのは、いつだっただろう。
小学生の時?てことは、四、五年くらい前。いやいや、もっとかも。
流石にインドアが過ぎない?
自分でもちょっと、驚いてしまった。
スマホで時間を確認する。七時五十七分。特に、誰からも連絡はなし。……相川からも。
「はあ、どうしよ」
自然と、溜め息が出てしまった。
相川と話さなくなってから、そろそろ二ヶ月になる。こんなに長いこと、連絡すらとらないのは、今回が初めてだ。
いつもの夏休みだったら相川は、友達と海に行った撮った画像や、音楽フェスで、大騒ぎしているうざい動画とかを私に送りつけてくるのに。今年はまだ、一枚も届いていない。一文字すらも、送ってこない。
このままだと、奇跡的に続いてきた友情も、ついに終わりを迎えることになるのだろう。そんなの嫌だ。
自分の頬に、手を当ててみる。あの日、相川が触れた、頬。
あれは、友達に対する態度じゃなかった。だから私は、ビビって一歩、引いてしまったわけだけど。
どうなんだろう。時間が経ってみると、私の勘違い、過剰反応だったんじゃないかと思えてくる。
私は多分、相川のことが好きだ。この先も、ずっと一緒にいたいと思っている。ずっと一緒にいたいから、自分の気持ちを伝える気なんて、毛頭なかった。
告白して、振られて、離れてしまうより、友達のままの方が長く、安定した関係を築いていられるから。
でもまさか、頬に触れられただけで、この関係が脆く崩れさるとは。全くの想定外だ。
相川は、どう思っているんだろう。
私と話さなくなったことを、少しは悲しんでくれているだろうか。
いっそのこと、何事もなかったように、連絡してみる?でも、なんてメッセージを送ったらいいの?『元気?』とか、『毎日 暑いね』 とか。
しっくりこない。
私はアプリを開くこともせず、ただ、意味もなくスマホの画面をスクロールした。
ドンッ、と体に響く、低くて大きな音が、夜空に鳴り渡った。
「!?」
あまりに驚いて、危うくスマホを落としそうになる。慌てて両手でしっかりとキャッチして、事なきを得る。また、大きな音が、今度は立て続けに鳴った。
巨大な和太鼓を叩いたような、聞き馴染みのある低い音。
私は、音の鳴る方の空を見回し――発見した。
無機質なビルとビルの隙間から覗く、煌めく金色の花火。
パラパラパラと、細かく弾け、燃えながら、やがては消えてしまう。
私はスマホを構えた。
再び、ドンッと大きな音が鳴る。
パシャリ。
今度は、緑色の花火だった。私のスマホだと、生の臨場感が大分薄れてしまうけど、花火だと一目で判る画像は撮れた。
そして、その流れのまま、私は花火の画像を相川に送信していた。
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