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……あれ?
私はパチクリと瞬きをした。何で、送っちゃってるの?
ビルの影に隠れて、花火の両端が欠けている、大して上手く撮れていない画像なのに。
相川にどうやって連絡をしようか、ぐるぐる考えていたせいで、人差し指が誤作動を起こしたみたいたった。
ご、誤魔化さなきゃ。
『間違えた』って送る?でも、それも変じゃない?
スマホの画面が、突然、ぱっと切り替わった。バイブが震える。
相川 の文字が、中央に表示された。
電話だ。
相川が直接、私に電話をかけてきた。
心臓が、おかしな具合に騒ぎ出す。嬉しいのか、困っているのか、焦っているのか、自分でも判らない。とにかく、馬鹿みたいに緊張している。
逃げたい衝動を抑え、私は電話に出た。
「……はい、」
「青、」
久しぶりに聞く、相川の声だ。ちょっと心に、じぃんときた。
「あの、ごめん。歩いてたら丁度、花火が上がって、その、つい」
全く、誤魔化せていない。ありのままを話してしまっている。
その時、また花火が上がった。
同じタイミングで、相川の方から大勢の歓声が、漏れ聞こえてきた。もしかして、相川も花火を見ているのだろうか。
考えてみれば相川やその友達が、夏祭りなんて有名な行事に、参加しないはずがない。きっと、もっと花火がよく見える場所で、皆でわいわい楽しんでいるのだろう。
相川からなぜか、反応が返ってこない。もしかして、聞こえていないのだろうか。
「相川?」「青、」
二人で同時に喋って、声が被ってしまった。私は口許を抑えた。
「あのさ、」
相川が、言い直す。その声はいつもより、掠れて聞こえた。
「今から、会えない?」
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