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そんなこんなで、相川と私は付き合うことになった。
相川が夜の広場で「友達じゃいられない」と言ったのは、私のことが好きだから、友達として一緒にいるのは限界だ。という意味だったらしい。ややこしいにもほどがある。
傘泥棒事件のあの日、相川は私の頬に触ったせいで、私に嫌われたと勘違いしていたそうだ。お互いにためらい過ぎて、溝を作ってしまった。
私が最後と決めて、相川の頬に手を伸ばさなかったら、そのまま赤の他人になっていたかもしれなかった。
夏休みはあっという間に終わり、10月。
冷たい雨の降りしきるなか、私たちは一緒に下校していた。濡れないように肩をぴったりとくっつけて、一つの傘を二人で差す。
私と相合傘をしたい、という狂った理由で、相川は自分の黒い折り畳み傘を、ロッカーに置いてきていた。
すぐ横に、相川がいる。
茶髪頭で、ごついピアスをしたお洒落なお兄さんが差すのは、私の傘。
黄色と水色の小花柄が、いっぱいに散りばめられている、可愛い傘だ。
やっぱり、変じゃない。似合っている。でも、面白いかも。
「ん?」
相川が、笑いを堪えている私に気が付く。
「ううん、何でもない」
私がそう言うと、相川はわざとらしく片眉だけを、綺麗に上げて見せた。
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