2/18

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 相川と私は、同じ中学校出身だ。  二年生でクラスが一緒になってから、何となく話をするようになった。相川はクラスの中心グループに属する、陽気な男子。対して私は、いつも本ばかり読んでいる無口な女子。共通点など皆無だった。  でも、あまりに正反対すぎるからこそ、お互いが物珍しくて、奇跡的に友達になったんだと思う。  とは言っても、中学校を卒業すれば疎遠になる。その程度の、薄くて弱い繋がり。そのはずだった。  まさか、同じ高校に通うことになるとは。  しかも高二の今年は、同じクラス。気が付けば、相川とはもう四年の付き合いになる。ここまで長く続いている男友達は、この、私の宿題を写している図々しい奴だけである。それどころか、こいつ以外に仲の良い男子など存在しない。  ……何だか、自分が情けなくなってくる。  「あー、終わったっ。間に合った!」  相川は、シャーペンを手放した。メタリックのシャーペンが、ノートの上をころころと転がる。  「危ねー。てか、青。さっき何か言ってた?」  目尻の切れ上がる、微かにつり気味の瞳が、ちらりと私を見る。  相川は元々、整った顔立ちをしている上に、高校に入ってから、急激に身長が伸び始めた。現在、175センチ以上はあるらしい。しかも、まだ伸びているとか。髪を染め、見た目に気を使うようになり、結果。陽気な男子(こども)から、背の高いお洒落なお兄さんに変身しつつある。    中学生の時と、さほど見た目が変わっていない私には、羨ましいほどの変わりようだ。  私も、髪型くらい変えてみようかな。髪色まで変える勇気はないけど。    「ん、」  私は片手を差し出した。ノートを写させてあげた代わりに、何かしら頂いても、いいはずだ。  私の手に何の躊躇もなく、相川の手が重ねられる。  意外と大きな手だ。私の手首にまで、相川の中指が届いている。手足のサイズが大きな人は、身長が高くなると聞いたことがあるけど、本当なのかもしれない。  「……って、違うでしょ。お礼は?」  馬鹿馬鹿しくなった私は、出した手をしまった。お気楽そうに、相川がへらりと笑う。  予鈴のチャイムが鳴る。  「まあ、今度ってことで。ありがとな」  そう言った相川は、自分のノートを持って廊下側の席に戻っていった。すぐに数学の先生が、教室にやってくる。のんびりとした空気が一瞬で、授業モードに切り替わった。  「おーい、早く座れ。授業始めるぞ」        
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加