3人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな彼女が勝手にテレビを消したため、優輝は不満げな表情を向けた。甲高い声を意識的に低くして尋ねる。
「なんでテレビ消したの?」
「優輝には少し刺激が強いニュースだから、今はまだ、いいの」
優輝はふうん、とすねたように返事をする。マミの言動で不快な思いをするのは初めてのことだった。何かを考えるように黙りこんで再びマミに向き直る。
「どうして、アンドロイドをいじめる人がいるの?」
マミは柔らかく整った眉を下げて答える。
「きっとみんな、アンドロイドに怒っているの」
「よくわかんない。ぼく、上手に絵が描けなくて、モヤモヤすることもあるけど、えんぴつを折ろうとか、紙をやぶこうとか、思わないよ」
「そう、優輝は優しい子ね」
優輝の瞼がぴくりと動く。零れそうな大きな瞳がライトを反射してきらきらと光った。けれどすぐに瞼を半分ほど落とし、上目遣いで尋ねた。
「ほんと? ぼくはやさしい?」
「ええ、とっても」
マミは間髪を入れずに答える。
「じゃあ、お母さんが言ってたみたいな人になれるかな?」
「……お母さんとは、どんなお話をしたの?」
「あのね、やさしい人っていうのは、みんなのお願いをきく人じゃないんだって。あんまり言いたくないけど言わなくちゃいけないことも、ちゃんと伝えられるような、勇気のある人のことだって。だからぼくは『ゆうき』なんだって!」
「そう。素敵なお母さんね」
マミは柔らかく微笑んだ。けれど優輝には、それがもの悲しげに感じられた。
最初のコメントを投稿しよう!