LaCKiNG

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 そんな彼女が勝手にテレビを消したため、優輝は不満げな表情を向けた。甲高い声を意識的に低くして尋ねる。 「なんでテレビ消したの?」 「優輝には少し刺激が強いニュースだから、今はまだ、いいの」  優輝はふうん、とすねたように返事をする。マミの言動で不快な思いをするのは初めてのことだった。何かを考えるように黙りこんで再びマミに向き直る。 「どうして、アンドロイドをいじめる人がいるの?」  マミは柔らかく整った眉を下げて答える。 「きっとみんな、アンドロイドに怒っているの」 「よくわかんない。ぼく、上手に絵が描けなくて、モヤモヤすることもあるけど、えんぴつを折ろうとか、紙をやぶこうとか、思わないよ」 「そう、優輝は優しい子ね」  優輝の瞼がぴくりと動く。零れそうな大きな瞳がライトを反射してきらきらと光った。けれどすぐに瞼を半分ほど落とし、上目遣いで尋ねた。 「ほんと? ぼくはやさしい?」 「ええ、とっても」  マミは間髪を入れずに答える。 「じゃあ、お母さんが言ってたみたいな人になれるかな?」 「……お母さんとは、どんなお話をしたの?」 「あのね、やさしい人っていうのは、みんなのお願いをきく人じゃないんだって。あんまり言いたくないけど言わなくちゃいけないことも、ちゃんと伝えられるような、勇気のある人のことだって。だからぼくは『ゆうき』なんだって!」 「そう。素敵なお母さんね」  マミは柔らかく微笑んだ。けれど優輝には、それがもの悲しげに感じられた。
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