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朝五時に目が覚めた。この時間に起きることに意味はない。ただ早寝早起きが習慣となっているだけだ。
早起きは三文の徳ともいう。もっとも三文は現在価値にして百円に満たないので、ゆっくりしたい人は寝ておきなさい。
布団を立ってカーテンを開けると、薄い日光がそれでも寝起きの目に眩しい。
一日は朝日を浴びることから始まる、これすなわち健康に生きる上での鉄則である。そこの夜型人間、夜は寝て朝は起きた方がよいぞ。
ベランダへと出る。ワンルーム故、広さは猫の額ほどしかないが、南を向いたその場所は晩夏の温かな光に満ちている。
抜けるような青空を見上げながら腕を伸ばして大きく背伸び。固まっていた身体にびりびりと電流が走る。この感覚がたまらない。
十分に伸び終えて、ふうと息をつく。いい天気だ、洗濯をしよう。洗濯機をまわしつつ朝飯の準備といこう。
回れ右して部屋へ戻ろうとしたときだった。
何かが落ちてきた。逆光に黒くなりながら空中をひらひらと揺れ動き、それは目の前にぱさりと落ちた。
その正体は、ひと目見てすぐにわかった。
形はT字。材質は薄布。色は淡いオレンジに金の縁取り。
レースの生地はところどころが透けて見え、複雑な刺繍をもって柄としている。
試しに拾ってみると手触りはさらさら、そしてとにかく柔らかい。
また、日の光にさらされていたのか、それはほのかに温かかった。
そう、それはパンツだった。もちろん女性物の。
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