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交換時期
「ねぇ、チカチカしない?」
妻が僕にそう言った。
「あぁ、確かに、チカチカしているよ」
ある時代から、私たちは心に適当なモノを入れられるようになった。
例えば、昔、好きだった靴や、遊んだおもちゃ、彼女にもらった時計や、父親の写真に、子供からの手紙だったりと。
モノにある「気持ち」を心に入れておくのだ。
便利であった。
想い出は直ぐに消えてしまうから。
だが、モノに付着する気持ちもいずれ切れてしまう。
そうすると、もう直ぐ無くなるという意味で
心のランプが点滅してしまうのだ。
「あー、やっぱりね、交換時期よ」
妻は、心を開けて、中のモノを取り出してそう言った。
「ほんとだね、新しいモノを入れなきゃね」
そう言って妻と二人でカタログを見ることにした。
古くなった、結婚指輪は捨てて、新しいモノに取り替えなければ。
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