彼女のお願い

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

彼女のお願い

「あっつい! ねぇ! あっついよ!」 ヤスミが、寝る直前にそう叫んだ。 たしかに、とても暑い。 昨日まで、あんなに寝過ごしやすい気温が急に夏夜になった。 扇風機も、風鈴も、なんなら、スイカも無いこの現代で、暑くて叫んでいるのだ。 夏の夜なら、そういう風物で、私らの心や、身体は気持ちを涼しくしたものだ。 それを、我々は置き去りにしてしまったのかもしれない。 そんな風に思っていたら、 そういえば蚊取り線香ならあったかもな などと思い出し、徐ろに取りに行こうと、身体を起こしたら、ヤスミが 「違う!」 と、また叫んだ。 なんだか、大きな声だ。 「だから、アレクサ、違うよ、そうじゃない、クーラーをつけてよ」 ははっ。なんだ、データベースの見るところを間違えていたようだ。 「了解しました。おやすみモードにしますね!」 クーラーの電源を入れれば、ヤスミは直ぐにスマフォを弄り始めた。 はぁ、なんか、つまんないなぁ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加