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彼女のお願い
「あっつい! ねぇ! あっついよ!」
ヤスミが、寝る直前にそう叫んだ。
たしかに、とても暑い。
昨日まで、あんなに寝過ごしやすい気温が急に夏夜になった。
扇風機も、風鈴も、なんなら、スイカも無いこの現代で、暑くて叫んでいるのだ。
夏の夜なら、そういう風物で、私らの心や、身体は気持ちを涼しくしたものだ。
それを、我々は置き去りにしてしまったのかもしれない。
そんな風に思っていたら、
そういえば蚊取り線香ならあったかもな
などと思い出し、徐ろに取りに行こうと、身体を起こしたら、ヤスミが
「違う!」
と、また叫んだ。
なんだか、大きな声だ。
「だから、アレクサ、違うよ、そうじゃない、クーラーをつけてよ」
ははっ。なんだ、データベースの見るところを間違えていたようだ。
「了解しました。おやすみモードにしますね!」
クーラーの電源を入れれば、ヤスミは直ぐにスマフォを弄り始めた。
はぁ、なんか、つまんないなぁ。
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