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四.葉緑体スーツ
温室効果ガスによる、地球全体の温暖化が問題だった頃、ある国の科学者が二酸化炭素を栄養化する葉緑体のスーツを開発することに成功した。
そのスーツはかつてないほど画期的なものだったので、アメリカとイギリスは即座に全国民に配布することを決定した。
すると、各国の研究機関から、ほんのわずかではあるものの、温室効果ガスの減少が認められたと発表された。
その結果をみて、他の国々も同じような政策を打つことにした。
しかし、日本とフランス、中国だけはそのスーツの採用を断固拒否すると訴えていた。
「何故だ? こんなにも人類の未来に希望をもたらすものだというのに!」
実施した国々は、国連総会でこの三国を責め立てた。
「あなた方は未来の子供達に負の遺産を残したいのか!」
三国は苦い顔を浮かべて顔を見合わせるしかなかったが、他国の威圧感に肩身の狭い思いをしながらも、なんとか今回も導入を見送ることができて安堵した。
「はあ、我々は間違えてないよな?」
日本の代表は心配そうに、他二国の代表に尋ねた。
「当たり前だ」
中国の代表は即座に答えた。
確かに、そのスーツが温室効果ガス削減に一役買ったことは明らかで有った。
だが、もう一つ、大きな副産物があったのだ。
このスーツを着ていれば、どこに居てもエネルギーを得ることができてしまう。つまりお腹が空かないのだ。そのため、採用している国の農業、水産業、そして飲食業はことごとく廃れてしまったのだ。
「美味しいものだって、未来の人類に残すべきだよなぁ」
他の実施国の会合のテーブルが寂しくなっている中、三国だけは自国のご馳走を並べた豪華なテーブルに座り、皆で食べながらうなずき合った。
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