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九.カリスマ
各国のリーダーたちは、人類同士で争うことにほとほと疲れ果てていた。そこで、彼らは話し合いのために一堂に会し、自分たちで理想の「カリスマ」を作ることにした。その「カリスマ」にリーダーを代わってもらおうというのだ。
「どうだ、昔の偉人を蘇らせるのは?」
「それなら、わしの国のA氏がいいだろう」
「いやいや、我が国のB氏だろうよ」
「こらこら、そういうことに疲れたからこその今回の計画だろうよ。そういうのはやめて、それぞれの偉人のいいところを蘇らせよう」
「他にはどうだ。頭の良さも必要だ」
「甘いマスクであるとか……顔だって大事な要素だ」
「もちろん体格も」
「人を惹きつける声も必要だよ」
「男性であるべき? 女性であるべき?」
「ある程度の若さが必要だが、老練さも必要だ」
全員で作った「カリスマ」の条件リストは膨大になり、会議は7日間箱詰め状態で行われた。
それから2年後、「カリスマ」は誕生した。
全身が純白の人型ロボットであった。
「おお、これが……カリスマか……」
全ての人類が──その場に居合わせた人も、テレビ中継を見ている人やネット放送を見ている人たちも──「カリスマ」の姿を見ただけで恍惚とした表情を浮かべていた。
それもそのはずで、「カリスマ」に装備されていたのはあらゆる人間を操る力であった。誰もが、姿を見ただけでマインドコントロールされ、声を聞いただけでトランス状態になった。それでいて、武器で攻撃してもビクともしない完璧な外殻を持ったロボットなので、「カリスマ」を人間には簡単に破壊できないようになっていた。
それから、しばらくの間、地球に戦争は起こらなかったそうだ。
何しろ、誰もがうっとりしているのだから。
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