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カラー
生まれた時から、私には色がなかった.
目のせいなのか、脳のせいなのか未だ分かっていない。
世界は白と黒のグラデーションで出来ていた。
だからなのか、私はなかなか感情を外に出せずにいた。
それは、当たり前なのかもしれない。
世界に色がないのに、私に感情など咲くはずもない。
花々や、映画の色、料理や、雑誌。
それに、人々も。
皆が皆、白と黒のグラデーションである。
豊かに育つはずの感情には、『色』という、栄養分が必要なのかもしれない。
それ故に、私は孤立をする事が多くなる人生であった。
学校や社会、職場に於いて、私は常に一人でいる事を好んだ。
そうするほうが自然である気がしたからだ。
「君は間違えているよ」
ある日、遠い昔の友人が私の元に訪れてそう言った。彼が何のために私にそれを伝えたのかは分からないが、それでもそう言ってくれた事を私は今も覚えてる。
「蜂も全てが白黒に見えているのに、彼らには花も、春も、陽光さえも美しく感じている筈だ。色味のせいではない。君が人生を豊かにする気があるかないかだよ」
諦めていたわけではない。
彼の言う、豊かさを。
今更、色を知らなくてもとも思う。
だから、
私は何も変えない。
何も。
ただ、彼の言葉は、覚えている。
この白黒の世界の中で。
はっきりと。
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