最終節 最期にあなたに会えてよかった。

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「ま、待ってくれ。俺も死んだんだ、一緒に行こう。」 風花は首を横に振った。 「先輩はまだ死んでませんよ。まだ生きないと駄目でしょ。」 「…風花。」 「紺野先生を手離しちゃ駄目です。今も。」 風花は耳を傾ける仕草をし、澪田は耳を澄ませた。 「…じ………うじ………しゅうじ……柊二。目を開けて、死なないで。」 紺野の声が微かに聞こえた。 「元の世界であなたを待ってるわ。早く戻ってあげてください。」 「で、でも。」 「私は大丈夫。もうこの世に未練はない。もし、また私が生まれ変わることがあったら、また会えたら嬉しいな。それじゃ。」 風花は涙を流しながらニコッと最高の笑顔を見せると、ゆっくりと上昇していった。 「ふ、風花ぁ!!俺、お前のこと絶対に忘れない!絶対に!!」 澪田は叫びながら手を振った。 風花は光に包まれながら消えていった。 また、目を開いた感覚がした。 今度は暗闇じゃない。ぼんやりと景色が見えてきた。 「…澪田?お、おい!澪田が目を開けたぞ!」 「え!?」 …池田か。 「柊二!!」 …史緒。 「大丈夫?分かる?」 「…あ、あぁ。俺は…」 「眠ってたんだ、3ヶ月もの間な。」 池田が震える声で言った。 「…3ヶ月…もか。」  「紺野先生、俺はナースステーションに寄ってから澪田の家族と滝井課長に連絡して来ます。」 池田はそう言って病室から出て行った。 …ぼやけていた景色が段々とはっきりしてきた。目の前には涙をぼたぼたと垂らしている史緒がいる。 「…良かった…ほんとに良かった。」 「…史緒、ごめんな、心配かけたよな。」 澪田は腕をゆっくり上げて、紺野の頭を撫でた。 「ほんとに心配したんだから、馬鹿。でも許す、生きててくれたんだから。」 紺野は澪田を抱き締めた。 …温かい。俺は生きていて良かったのか。 ありがとう、風花。 また、いつか…。
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