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澪田が慌てて白衣を捲ると、左腕の肩から先が無くなっていた。
「うわああああっ!」
澪田が驚いて後退りすると、天粕も事態に気が付き、慌てて救急車を呼んだ。
「澪田刑事、落ち着け。間崎さんはまだ息があるか?」
澪田は這いずるように間崎に近付き、呼吸と脈を確かめた。
「…まだ息あります。間崎さん!頑張ってください!すぐに救急車来ますから!」
その時、部屋の電気が激しく点滅を始めた。
「また、ネットカフェの時と同じだ。パソコン!」
澪田がパソコンに目を向けると、ニヤリと笑う女性が千切れた左腕を持ってこちらを見ていた。
「…嘘だろ。」
ようやく拝めたその女性の顔は、澪田が"そうでなければいい"とずっと思っていた女性の顔をしていた。
「…風花。」
「やはり、月見里風花か。しかし、これは現実なのか?」
天粕も自分の目を疑うように、何回も目を擦った。
「風花。風花なのか!?」
澪田は取り乱したようにパソコンに近付き、画面の中の女性をじっと見た。月見里に似た女性は、じっと左腕を握ったまま澪田を見つめていた。澪田は画面の中の月見里と目が合ってるような気がして不思議な感覚がした。
「…澪田柊二。」
月見里はぼそりと呟いた。
「風花、やっぱりお前なのか!?そうだ、俺だ澪田柊二だ。」
「…画面の中と会話してるのか。動画ファイルのはずだぞ。澪田刑事、下がれ!何があるか分からないぞ!」
澪田には天粕の忠告は届いておらず、澪田はパソコンに手を掛けて揺すり始めた。
「風花!どうしてこんなことを!」
「…ごめんなさい。」
月見里は悲しげな声で呟いた。澪田は、パソコンから手を離すと画面をじっと見つめた。
「風花、今何て?」
澪田が問い掛けた瞬間、画面の電源が切れ真っ黒になった。そして、部屋の電気の点滅を止み、通常の明かりに戻った。
「…消えたのか?」
「分かりません。天粕さん、見ましたよね?」
「あぁ、間違いない。月見里風花だった。」
澪田は力が抜けるように床に座り込んだ。
「う、うぅ…くそ、一体どういうことだ。うぅ…。」
「澪田刑事、泣いていても何も始まらないぞ。もし、月見里風花が根源にあるのなら、それを止めるのがお前さんに出来ることだろ。」
「けど、一体何をしたら良いか…。」
「やはり、小阪田がその術を知ってるんじゃないのか。彼女の口からは月見里風花という名前は一切出てこなかった。こちらから月見里の名前を出せば、違う反応をするかもしれない。」
天粕は澪田に手を貸して立ち上がらせた。
静まり返る室内。遠くから救急車のサイレンが聞こえていた。
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