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一時間後、時刻は22時半近く。
間崎が救急搬送された病院の待合で、うつ向いて座っていた澪田の元に池田がやって来た。
「澪田。」
「池田か…。」
池田は澪田の隣に座った。
「間崎さんはどうなんだ?」
「左腕を失ったが、命は助かったよ。」
「さっきそこで天粕さんから聞いたよ。本当なのか?風花ちゃんの話は。」
「…あぁ。」
「そうか。お前は大丈夫か?」
「…余り大丈夫じゃないかもな。そっちはどうだったんだ?」
「時間も時間だったからな、少ししか話を聞けなかった。だが、風花ちゃんの話を聞いて繋がったよ。」
池田の言葉に、澪田は頭を上げて池田を見た。
「鬼龍院千草は仮の名前。そして、小阪田が除霊を試みたが失敗に終わった霊だそうだ。小阪田の家系は代々霊媒師の血筋で、霊に対して名を付けることも除霊の一つとされてきたそうだ。名前すらない霊は山程いて、名を付けることが第一歩になるんだとよ。」
「…つまり、元は違う名前の霊ってことか。」
「あぁ、その正体が月見里風花って話なら繫がるだろ。まぁ信じたくはないがな。」
「…やっぱりあの死に方が原因かな。」
澪田の言葉に、池田は返す言葉が見当たらなかった。
「…どうしたら、風花を救えるんだ。」
「澪田、お前まさか風花ちゃんが死んだのは自分のせいだって思ってないよな?あれはお前が何したって変わらない結果だったんだ。上からの命令だったんだからよ。…それに比べて、俺は夏海を助けられたのに助けなかった。」
「…池田。そ、それだってお前が悪いわけじゃないだろ。」
「なら、風花ちゃんが悪いのか?」
池田は涙声だった。そして、その池田の問い掛けに澪田は黙ってしまった。
「すまない、冗談だ。間崎さんが無事なら良かった。俺は帰るぞ。お前ももう休め。」
池田は立ち上がって出口に向かって歩き出した。
「あ、そうだ。」
池田は足を止めて澪田に振り向いた。
「俺さ、この事件解決したら、この仕事辞めるわ。」
澪田は思わず立ち上がった。
「は?池田、お前何言ってんだ!?」
「別にこの仕事が天職なわけじゃないしな。…夏海に申し訳無さすぎて…俺なりのけじめだ。お前だけにしか言ってないからな。」
池田は手を振りながら再び歩き出した。
「…かっこつけやがって。たくっ…。」
澪田が池田の背中を見ながら呟いた。
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