第四節 気にするな。お前の反応は正常だよ。

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紺野に呼ばれた澪田は、工藤と道永を連れて車で紺野の職場を目指していた。 「…で、澪田係長、紺野さんの案件って?」 後部座席にいた道永が前方に乗り出しながら聞いた。 「てか、道永さん来る必要あったんですか?」 「何でよ、工藤くん。あなたより私の方が歳上なんだから、もっと敬いなさいよ。」 「不破管理監からの命令ですか?」 「元々私は澪田係長と一緒に行動するように言われてるので。私だってこの事件解決したいんですから。で、質問に答えていただきたいんですが。」 澪田は、道永が随分と溶け込んできたなと感じつつ、ルームミラー越しに道永を見ながら答えた。 「…どうやらマスコミが黙ってないようでな。紺野先生のとこにも取材が来たらしい。」 「え、解剖した医者のとこにまでですか?」 「警察が中々発表しないから、角度を変えて攻めようとしたマスコミがいるようだ。」 「つまり、ヘルプの電話ですか。」 がっかりした様子の道永を見て、澪田はニヤリと笑った。 「マスコミは俺らが持ってない情報を持ってる可能性もある。それを手に入れるのも一つの目的だ。そのへんは、女性の方が相手も話しやすかもしれんしな。」 「…それで道永さんを。」 工藤は頷きながら呟いた。 現地に着くと、紺野が電話で言っていた50代くらいの記者が入口で座り込んでいた。 「ったく、まさか史緒のとこに記者が行くとは思わなかったよ。」 澪田はそう言うと記者たちの方に向かって歩き出した。すると、記者が澪田たちに気が付き、立ち上がった。 「お宅らはここの関係者?」 記者は横柄な態度で澪田に話し掛けた。 「こういう者です。」 澪田が警察手帳を見せると記者の男は目を見開いた。 「あれま、刑事さんか。そりゃ都合がいい。俺はこういう者だ。」 記者の男は、ポケットに手を突っ込んで一枚のシワシワの名刺を取り出すと、その場でシワを伸ばして澪田に渡した。澪田は顔をしかめながら名刺を受け取った。 「…週刊アーム編集長、片野地大(かたのちだい)。…週刊アーム…失礼ですがどういった雑誌ですか?」 「紙媒体じゃなくて、デジタル配信しかしてないマイナーな雑誌だよ。アームってのはフランス語で霊って意味。」 「霊?」 「まぁ世にいうオカルト雑誌だ。だが、結構購読者はいるんだぞ。俺が飯食っていける程度の収入はあるからな。」 澪田は名刺を覗き込む道永に、片野の名刺を渡した。 「で、その心霊雑誌の編集長さんが、ここにどのようなご用事で?」 澪田が睨み付けながら聞くと、片野は噴き出すように笑った。 「プハハハハ!笑わせるなよ。今このまちで起きてる奇妙な事件、警察がひた隠しにしてるのには、霊が関係してるんだろ。」 「…どこでそんな話を?」 工藤が質問した。 「兄ちゃん若いんだから分かるだろ。今のネット社会、どこからでも情報を上げられるし、どこからでも情報を得れる。まして、この手の話は俺のとこに入ってこないわけがない。で、刑事さん、その真相を教えてくれねぇか?」 片野はニヤリと笑った。
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