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「…何の話だかわかりませんね。」
澪田は冷たくあしらった。
「ふん、ならネットカフェで起きた大量殺人はどう説明する。詳細を出さないのはお前らだろ。」
「その件は事件と事故の両面から捜査中で、まだ公表できるものはない。」
「事件だとしたら、その殺人鬼は世に放たれたままだ。警察がそんなことをするか?」
澪田は沈黙した。
「ふん、警察はそんなことはしない。情報が更新されないのは、それが世間に公表できない内容が真相だったからだろ。」
「だから、何故それが霊に繫がるんですか?」
工藤が慌てた様子で質問した。
「兄ちゃん、あんたに演技は無理だな。…これだよ。」
片野は一枚の写真を見せた。それは、ネットカフェで上河内たちの遺体とともに月見里の姿が写っている写真だった。
「あのネットカフェの防犯カメラ映像を印刷したものだ。」
「こんなものどこで。」
「情報源は言えんが、防犯カメラの映像を自宅の機器にも繋いでいるヤバい従業員がいたってわけだ。まぁ、俺もそいつ自身は会ったこともないが、俺のサイトに投稿されてきたものだ。この画像の信ぴょう性はどうだ?」
「…造り物だ。」
澪田は写真を突き返した。
「なら、あの事件は事故か殺人か、ハッキリしろよ!」
「捜査中ですから。」
「ふん、その一言で乗り切るつもりか。俺はこの画像をしっかり検証してる。オカルト写真とかは造り物が多いからな、その点を見分ける能力は他人よりも長けてるのでな。この画像は本物だよ。そして、この女は間違いなく生身の人間じゃない。ここにいる法医学医がこの遺体を解剖したんだろ?話を聞きたいだけなんだよ。」
「お断りします。」
「ふん、随分とつめてぇじゃねぇか。いいか、警察だからって傲るなよ。後から真実がわかった時の世間の風には気を付けな。…名刺くれ。」
片野は手を差し出した。澪田は仕方なく自分の名刺を手渡した。
「また、お話聞きにいきますから。」
片野はニヤリと笑うとその場から去っていった。
「…ったく、態度が悪い記者でしたね。」
「まぁまだそこまで知名度が高くないオカルト雑誌で助かったな。だが、大手の記者含め、世間が騒ぎ出すのも時間の問題かもな。」
「けど、もしあの画像がどっかで取り上げられたら、月見里風花さんの顔が晒されることになりますよ。」
「…あぁ、だから食い止めるんだよ。」
工藤は澪田をじっと見つめた。
「…っ!?な、何だよ。」
「顔、怖いですよ。」
「…そいや、道永は。」
二人が後ろを振り返ると、道永は数メートル後方で茂みに隠れていた。
「は?おーい、道永さん!…何してんすか?」
「…苦手で。ああいう記者。」
意外な道永の姿に、澪田と工藤は目を見合わせた。
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