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「捜査開始から三日が経ったが、一向に明るい報告が無くてな。正直、皆焦っていた。一家惨殺した犯人は、犯人像も定まらないまま野放しになっているし、何としても早く捕まえなければってな。指揮を執っていた県警本部は、捜査の範囲を広げるため、俺たち所轄の刑事は単独行動するように命じてきた。人工が増えれば、それだけ効率は上がる。当たり前の話だが、我々の安全面は落ちるわけだが、あの時は俺も矢那川さんも納得してしまったんだ。その命令が出た日の夜、俺は風花から連絡を受けた。」
「…連絡?」
工藤は、固唾を呑んだ。
「あぁ、犯人と思わしき男の候補が絞れてきたってな。聞き込み調査と風花が独自に調べた諸々の内容で、根拠という根拠は無かった。風花は、それを本部に伝えるべきかという相談だったんだが、俺は矢那川さんに聞けとあしらってしまった。…言い訳だがあの時は俺にも余裕がなくてな、逆に風花が成果を上げることに嫉妬をしてたのかもしれん。その翌日だよ、風花が死んだのは。」
「犯人のところに一人で乗り込んだんですか?」
道永が質問した。
「あぁ。矢那川さんは本部に報告したが、根拠のないものは取り扱われなかった。あの時は様々なデマも飛び回ってたからな。本部はまず根拠を持って来いと言った。矢那川さんは、なら一緒に捜査をしようとしたが、本部は単独行動の命令を解かなかった。…忘れもしない、その日の夕方の5時すぎ、日も落ちかけていた時に、矢那川さんから俺に連絡があった。風花が死んだって…。」
澪田は言葉を詰まらせて、涙を浮かべた。それを見た紺野は、ハンカチを渡した。
「柊二、ツラかったら後は私が話すわ。」
「いや、大丈夫だ。俺の口から話したい。」
澪田はハンカチで涙を拭き取ると、二人の目を見て続きを話し始めた。
「…俺が矢那川さんから聞いた現場に着くと、そこは古びた倉庫だった。中に入ると、とても凝視出来ない状態の風花の遺体があった。…全身に強アルカリ性の薬品をかけられていて…身体を溶かされていたんだ。」
「…酷い。」
道永は想像をして、嗚咽しそうになったのを堪えた。
「…鼻から上だけは溶けずに残っていてな、無惨に転がった顔半分の風花と目が合った気がして、俺はその場で泣き叫んだよ。何で一人で行かせちまったんだって、何度も何度も自分を責めた。」
「…風花ちゃんの遺体を診たのも私なの。正確には当時の先輩と一緒にだけど。…身体の殆んどが溶かされていたから、死因なんてものは全く分からない状態で。」
「…それで、身体が欲しいってわけか。」
工藤が呟いた。
「…俺は風花を止めたい。これ以上、風花にこんなことは…。」
「あと、さっきの片野って記者、風花さんの画像をネットに上げたりしたら、分かる人にはすぐに分かるかもしれませんよ。やっぱり止めないと。」
道永の言葉に澪田は強く頷いた。
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