最終節 最期にあなたに会えてよかった。

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「…やはり、絢川純也なのか?」 「俺を知ってるのか。…そうか、お前も刑事か。この女と同じだな。この女の記憶は俺と共有されている。」 「風花から出て行け!!」 「ふん、誰が…っ!?くそ、この野郎…ぐっ…。」 絢川の声は急に苦しそうになり、風花は頭を抱えて悶え苦しんでいた。 「…風花?」 すると、風花は落ち着きを取り戻したのか、澪田をじっと見つめた。 「…澪田先輩。」 「その声は風花。大丈夫か?」 「ふざけるなぁ!!」 「きゃああ!」 また2人の声が重なって聞こえた。 「中で2人が戦っているのよ。」 小阪田が言った。 「絢川、お前の目的はなんだ!」 「目的?俺にそんなもんはねぇ!全てを無にできりゃそれでいい!」 「…狂ってやがるな。」 「フハハハハハ、どうだ、マウントを取ったのは俺だ。月見里風花の魂はもうじき力を失う。」 「…どういう意味だ。」 「そうはさせないわ!」 小阪田が澪田の前に飛び出し、風花の顔に御札を貼った。 「…お前、俺をこの女の中に入れた女だな。お前のお陰だ、礼を言うぜ。」 風花は貼られた御札を取ってビリビリに破り捨てた。 「…嘘。全く効かない。」 「小阪田さん、どういうことだ。」 「分からない。私が思ってるより相当力の強い霊なんだと思う。…この人、何で殺されたの?」 「動機は不明のままだ。捜査をしてても恨まれるような人間じゃなかったと、周囲の人たちは言っていた。」 「…でも、矢那川さんや宇都宮さんには恨まれていたんですよね。」 道永が言った。澪田は「あぁ。」と頷いた。 「…あの夜のことか?」 風花はニヤリと笑いながら言った。 「…絢川、お前は殺された日のことも覚えてるのか?」 「あぁ、うざったいほど頭の中に焼き付いてやがる。そして、気が付けば自分が倒れたこの場所に戻ってきてる。」 「…何故、あんたと家族は殺されたんだ。」 「この家に来たのは男二人だった。見知らぬ男二人だ。そいつらは、音もなくこの家に忍び込み、まずは俺をめった刺しにした。俺は動けなかったが、かろうじて意識があった。騒ぎを聞きつけた妻がこの部屋にやってきてしまった。俺は助けられなかった。妻は俺の目の前で強姦され、そのまま刺し殺された。」 「…酷い。」 道永が呟いた。 「そして、そのまま俺は気を失い、気付けば今の状態だ。恨んで何が悪い!!幸せだった家庭を、俺の人生が終わらせられたんだ!この世界を恨んで何が悪い!!」 「…絢川、あんたはこの世に残ってこんな無惨な事を続けるべきじゃない。成仏してあの世に行くんだ。」 「…黙れ。黙れー!!」 絢川は風花の身体を操り、澪田に飛び掛かった。
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