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「しぶとい奴だな、この女。お前はもう俺の中に取り込んだはずじゃ…ぐ、な、何を…」
突如、風花が床をのたうち回るように苦しみ始めた。
「出てけ…私から。」
「うるせぇ!俺は再び身体を手に入れて、全てをぶち壊してや…」
「出てけぇ!!!」
風花の叫びとともに、絢川の声はしなくなった。
すると、風花の身体は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと立ち上がると、澪田の顔をじっと見つめた。
「…風花…なのか?」
「…先輩…私…今まで酷いこと…」
「違う!お前がやったんじゃない!お前は操られていたんだ!」
澪田は風花を優しく抱き寄せた。
「…ごめんなさい。」
「もういいんだ。風花、君は苦しむことなくあの世に…っ!?」
澪田は言葉を詰まらせた。後ろで見守っていた道永は、何事かと顔を覗かせた。
「…係長?」
その瞬間、澪田は仰向けに倒れた。
「澪田係長!?」
道永が慌てて駆け寄ると、澪田の胸にナイフが刺さっていた。
「…嘘。なんで!?」
道永が風花に振り向くと、風花はニヤリと笑った。
「フハハハハハ、馬鹿な男だ。」
「あなた、絢川純也!?消えたわけじゃなかったの!?」
「ふん、さっきは逆に女の中に吸収されるとこだったが、そんな簡単にやられてたまるか。この男が死ぬ前に首を貰う。」
「ふざけないでよ!」
道永は躊躇うことなく銃を2発放った。しかし、弾は風花の身体をすり抜けて、後方にあった窓ガラスが割れた。
「邪魔だ!」
風花は道永を撥ね退けると、そのまま澪田に覆い被さった。
「…ふ、風花…。」
澪田は、うっすらと目を開けてツラそうに口を開いた。
「残念だったな。あの女はまた俺の中だ。傀儡はこれで完成する。」
風花は澪田の首に手を掛けた。
「や、やめろ…。」
風花はニヤリと笑い、首に爪を食い込ませた。激痛が走った澪田は苦悶の表情を浮かべた。
…ここまでか。
…風花、すまなかった。
…工藤、俺のために人生を狂わせてしまってすまなかった。
…池田、俺の分まで刑事を続けてくれ。
…そして、史緒、俺は君と別れたことを後悔している。幸せになってくれ…。
澪田は覚悟を決めて目を閉じた。
「待って!!!」
突如、小阪田が部屋に飛び込んできた。
「絢川純也!これを見て!!」
「うるせぇ、一体何…だ…。」
風花は澪田の首から手を話すと、ゆっくり立ち上がった。
「…若菜…幸太…。」
小阪田が連れてきたのは、純也の妻の若菜と、子どもの幸太の霊だった。
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