最終節 最期にあなたに会えてよかった。

10/14
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
「しぶとい奴だな、この女。お前はもう俺の中に取り込んだはずじゃ…ぐ、な、何を…」 突如、風花が床をのたうち回るように苦しみ始めた。 「出てけ…私から。」 「うるせぇ!俺は再び身体を手に入れて、全てをぶち壊してや…」 「出てけぇ!!!」 風花の叫びとともに、絢川の声はしなくなった。 すると、風花の身体は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと立ち上がると、澪田の顔をじっと見つめた。 「…風花…なのか?」 「…先輩…私…今まで酷いこと…」 「違う!お前がやったんじゃない!お前は操られていたんだ!」 澪田は風花を優しく抱き寄せた。 「…ごめんなさい。」 「もういいんだ。風花、君は苦しむことなくあの世に…っ!?」 澪田は言葉を詰まらせた。後ろで見守っていた道永は、何事かと顔を覗かせた。 「…係長?」 その瞬間、澪田は仰向けに倒れた。 「澪田係長!?」 道永が慌てて駆け寄ると、澪田の胸にナイフが刺さっていた。 「…嘘。なんで!?」 道永が風花に振り向くと、風花はニヤリと笑った。 「フハハハハハ、馬鹿な男だ。」 「あなた、絢川純也!?消えたわけじゃなかったの!?」 「ふん、さっきは逆に女の中に吸収されるとこだったが、そんな簡単にやられてたまるか。この男が死ぬ前に首を貰う。」 「ふざけないでよ!」 道永は躊躇うことなく銃を2発放った。しかし、弾は風花の身体をすり抜けて、後方にあった窓ガラスが割れた。 「邪魔だ!」 風花は道永を撥ね退けると、そのまま澪田に覆い被さった。 「…ふ、風花…。」 澪田は、うっすらと目を開けてツラそうに口を開いた。 「残念だったな。あの女はまた俺の中だ。傀儡はこれで完成する。」 風花は澪田の首に手を掛けた。 「や、やめろ…。」 風花はニヤリと笑い、首に爪を食い込ませた。激痛が走った澪田は苦悶の表情を浮かべた。 …ここまでか。 …風花、すまなかった。 …工藤、俺のために人生を狂わせてしまってすまなかった。 …池田、俺の分まで刑事を続けてくれ。 …そして、史緒、俺は君と別れたことを後悔している。幸せになってくれ…。 澪田は覚悟を決めて目を閉じた。 「待って!!!」 突如、小阪田が部屋に飛び込んできた。 「絢川純也!これを見て!!」 「うるせぇ、一体何…だ…。」 風花は澪田の首から手を話すと、ゆっくり立ち上がった。 「…若菜…幸太(こうた)…。」 小阪田が連れてきたのは、純也の妻の若菜と、子どもの幸太の霊だった。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!