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(やめて。命だけは、助けて。もうやめるから。二度としないから。お願い)
彼女の懇願を無視して、私はロウソクの炎をゆっくりと床面に近づけていく。
ガソリンで作った導火線の先端に点火する。
小さな炎がしゅるしゅると生き物のように前方に向かって進んでいき、あっという間にベッドに達した。
ぼわっ、と大きな火柱が上がり、獲物の身体を赤い炎が包み込んだ。
獲物は身体を不格好にばたつかせる。
私は愉快になってきた。
「踊れ。踊れ……もっと踊れ」
炎の中の奇妙なダンスをいつまでも眺めていたい心境だったが、これ以上長居をするとこちらまで巻き添えを食ってしまう恐れがあった。
こんな女と心中はごめんだ。
私は名残惜しい気持ちで部屋をあとにした。
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