355人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
「男と女は違うのよ。女は直接、はっきりいってもらわないと分からない。気持ちの整理がつかないの。……これで良かったのよ。鈴代はとても傷ついたと思うけど、次に向かって歩いていける」
「それはお前のひとりよがりじゃないのか」
将暉がいった。
「お前は昔からひとりよがりなところがあるよ。自分勝手にどんどん物事を推し進めて他人のことなどお構いなし。だからいつも恋愛で空回りしているのさ」
「ほっといてよ」
果里奈はムッとして、コーヒーカップに手を伸ばした。
「で、お前の話ってのはなんだい?」
将暉が改まった態度で訊いてきた。
「日奈子について話があるって言ってたよな」
「ええ、そうよ」
果里奈はコーヒーを飲み干すと、カップをテーブルに戻し、将暉をまっすぐに見る。
「私はまだ……今回の一連の殺人事件の本当の決着はついていないと思っているの」
「……はあ?」
戸惑ったような声が返ってきた。
ぽかんとした顔をしている。
「何いってんだよ。阿部詩子がすべての犯行を自供しているんだぞ。彼女が嘘をついているとでもいうのか」
「いいえ」
「篠原琴乃の件にしたって、日奈子の犯行でカタがついている。これが間違いだとでもいうのか」
「そうじゃないわ」
果里奈はいずれも否定した。
「だったら、何が納得できないんだ」
いらついたように声を尖らせる。
最初のコメントを投稿しよう!