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しかし、今の果里奈は鈴代を心から祝福する気にはとてもなれなかった。
乾杯が終わると、祝福の輪からひとり離れて一番端の席に座り込み、あさっての方向を見ながらパスタを頬張る。
七人の同僚に囲まれた森口鈴代は、醜いながらも輝くような笑顔を弾けさせている。
「それにしても突然でびっくりしたわよ、鈴代。何で今まで隠してたの?」
鈴代と同様、小太りでずんぐりした同僚ОLが、恨みがましくいった。
「隠してたわけじゃないわ。私としても突然だったの。こんな急展開になるなんて」
と、頬を桃色に染める。
「ビビビッ、ってきたんですね。会った瞬間。運命の出会いってやつ」
一番年下の、見るからに軽薄そうな新入社員がいった。
「結婚式の招待状はいつ届くのかしら」眼鏡をかけた先輩社員が問いかける。
「結婚はまだまだ先です。まずは同棲という形で新生活をスタートさせます。彼が山梨県の勝沼に住んでいるので、東京で仕事をつづけることができないんです。それで突然の退社という運びになりました。本当にすいません」
「結婚だろうが同棲だろうが、おめでたいんだから寿退社ってことでいいじゃないですか。ねえ」
と、新入社員が周囲の先輩たちを見回す。
「鈴代の彼って、山梨県の勝沼に住んでるの?」
眼鏡の先輩社員が、ふと気になった様子で訊いた。
「はい」
「そうなんだ」
「あれっ、たしか、勝沼っていったら……」
小太りの同僚が、端の席に離れて座っている姫野果里奈に視線をやった。
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