親友

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 果里奈は心の中で毒づいた。  白ワインを手に取り一気にあおる。こんなに不愉快な気分になるのは何年振りだろう。  果里奈と鈴代はともに高校卒業後、新宿にある老舗デパートに正社員として採用され、十一年間アパレルフロアでともに働いてきた。思えば長い付き合いである。  キャリアアップを目指すと息巻いていた同期の仲間たちは次々に結婚していき、気付くと独身者は果里奈と鈴代の二人だけになっていた。  寿退社にあこがれ、二十代のうちに結婚・出産を経験したいと切実に願っていた二人が皮肉にも取り残される格好となった。  果里奈は鈴代とは反対に、長身で足がすらりと長く、小さく整った顔はそこそこの美形である。  しかし男運の悪さでは鈴代にひけをとらなかった。  彼らは最初のうちこそ果里奈の容姿に惹かれて近づいてくるが、付き合いが半年を越える頃になると、決まって浮気に走ったり、態度がぞんざいになったりして、最終的には彼女のもとから去っていく。果里奈にはその原因が分からなかった。  果里奈と鈴代は、もともと価値観や趣味が同じことに加え、独身同士という気安さもあって、常に行動をともにし、休暇を一緒にとって日本全国を旅して歩いた。  三ヶ月前には果里奈の故郷である山梨県勝沼市に鈴代を連れていき、実家に泊めてふるさとを案内した。幼馴染の友人たちも何人か紹介した。  そんな親密な関係をつづけてきたというのに、この裏切り行為はいったい何なのだろう。  女の友情とは、かくも儚いものだったのかと情けなくなる。
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