十年ぶりの毒

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十年ぶりの毒

あの日、西松さん。いや、石田白さんから頂いた彼の友人を白猫にアレンジした似顔絵を眺めながらソファーに寝転ぶ。 天井から吊るされたシーリングファンを背景に美しいシロの似顔絵の綺麗な目が俺を見つめる。 指先で、薄い紙の中から俺を見るシロの似顔絵の唇をなぞる。 鮮明に思い出す。初めてシロと迎えた夜を。 白い肌が汗ばみ、蒸れた空気に糸を引く唾液。 脊髄をなぞりながら頚椎に咲くジャスミンの花にキスをしたあの夜に体が熱を帯びる。 「あら?どうしたのその絵」 思い出に浸る俺を現在に引き戻す声に驚き起き上がると、妻が側まで来ていた。 細くて白い左薬指には、俺とお揃いの指輪が光る。 「素敵な絵ね。誰から頂いたの?」 鈴が鳴るように澄んでいる高い声がそう俺に尋ねた。 気づいた時には妻の手に絵が渡っていた。 いつの間に取られていたのか。
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