十年ぶりの毒

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その言い方に圧を感じた俺は生唾を飲み込む。 ねっとりとした妻の言葉達が俺を優しく責める。 「この絵に嫉妬しちゃう。ベッドの中でしか見せない顔を絵如きに向けるなんて。その顔は、目は、私だけが知る特権なんだからさ」 お前は私のもの。妻は時折そうやって俺に透明なハーネスをつける。 ちゃんと俺に自覚させるように言葉に出してくる。 独占欲がやや強い妻はこうした目を自分以外に向ける事を嫌がる。 この絵がかつての恋人だと知ったら、妻はこの絵を破り捨てるだろう。 「ねぇ、この絵を描いた方は男性?」 「ああ。今若者を中心に人気のあるイラストレーターだよ」 絵の作者が男性とわかった瞬間、妻の顔が優しく緩んだ。
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