シロ

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男を廊下に座らせた瞬間ぐしょりと濡れた音がした。 まるで脱水されていない洗濯物の様だ。 「大丈夫ですか?濡れてると気持ち悪いし寒いと思うので脱がして着替えさせてもいいですか?」 「脱がすの?変態?」 荒い息と一緒に男が言葉を吐いた。 助けてもらった人が言う言葉ではない言葉を。 命の恩人を変態呼びなんて、やっぱりロクでもない人間だ。しかもまたタメ語だし。 イラッとしながらも俺は優しい口調で話した。 幸い俺は大人だ。こんな事でブチ切れる様な人間じゃない。 助けたからには責任を持てる超大人だ。 「嫌ならご自分で着替えますか?今着替え持ってきますから」 まるで客人をもてなすかの如く俺は丁寧な言葉遣いで男にそう言い、一旦その場から離れ男の着替えを用意する事にした。 寝室のベッドの上に畳まれた部屋着を抱え、マグカップに白湯を注ぎ、洗面所からバスタオルを用意して男の元へと戻った。
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