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開幕
九月に入りもうすぐ二週間が経つ。大学の夏休み期間。
今日はバイトも誰かとの予定もない。朝食にしては遅い時間に母が茹でたそうめんを食べて、だらだら愛犬の柴犬を愛でて自分の部屋でさらにごろごろ。課題に手を付けずスマホを両手に乗せるだけの時間が流れるまま。
私は悩んでいた。悩まされていた。
珍しく自分からメッセージを送った。
いつもは来たものに返事をするだけ。どうやって送ればいいんだっけ。二行にも満たない文章を考えただけなのに、息切れがする。
『浦田 俊貴』
小学校からの幼馴染。彼の名前が書かれたトーク画面を開いて、文字を打っては消して、右端の送信アイコンを押そうとしてやめて。ベッドの上で寝ころびながらあれこれ悩み続けて三十分。軽やかな音と共に画面に表示された私からの計画実行宣言。
「中学の時のメッセージボトル、覚えてる?」
改めて読み返してもう後戻りはできないんだと、恥ずかしくなってすぐに真っ暗な画面にする。自分だけが覚えていたら少し悲しい。俊貴も覚えていたら少し、かなり嬉しい。
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